○あらすじ 病院に世話になったのは生まれた時だけ、と豪語する体の丈夫さだけが自慢の高校生「圭介」はその奇怪な体が原因で暗殺者に狙われてしまう。 その暗殺者は自らの体液が毒物という特異体質な美少女であったが、主人公に愛着が湧き任務を放棄してしまう。 その後少女は主人公のアパートに居座り、学校にも通い始める。 不思議な共同生活でだんだんと好意を寄せ始めた二人だったが、組織を裏切った事がバレてしまい新たな暗殺者が送り込まれる。 少女と協力して暗殺者を撃退、二人は一層お互いに気持ちを募らせた。 ○人物設定 主人公【圭介(けいすけ)】 高校に通う平凡な高校生。身長175cm程で筋肉質。 勉強はからっきしだが、運動神経は抜群で生まれてこの方病気らしい病気をした事が無いのが自慢。 豪放磊落な性格でとってもスケベ。 少女【凛(りん)】 超人的な肉体を持つ主人公に目をつけた組織が送り込んだ暗殺者。 自らの体から発生する体液は猛毒であり、男を誘惑しその毒を使って殺すのが彼女のスタイル。 140cm程の小柄な少女で、青いショートカットが特徴。 口下手で大人く、世間知らず。ロリータファッションを好む。 ○シーンの大まかな流れ 二人で共同生活を始めた圭介と凛だったが、ある日クラスメイトからプールの招待券を貰う。 引き篭もり気味な凛を無理矢理連れ出し、二人はプールを満喫する。 しかし、彼女の体液がプールに蔓延し、集団食中毒事件が発生してしまった。 -------------------------------------- プールでデート -------------------------------------- ■シーン:プールの前での会話 ■背景:プール/外観 【圭介】 「へー、意外にでっかいプールだなぁ。近所のヤツとは大違いだ」 無料で貰ったプールチケットだったから、あまり期待はしていなかったけど、市民プールなんかとはえらい違いだ。 お客さんもたくさんいるし、俄然楽しみになってきた。 ■立ち絵:凛/不満 ※私服:白いブラウス。赤と黒のチェックのミニスカート。縞模様のニーハイソックス 【凛】 「むー」 テンションが上がりっぱなしのオレに対して凛の機嫌は見るからに最悪だった。 【圭介】 「おいおい、まーだ拗ねてんのかよ。もうここまで来たんだ、あきらめろって」 確かに強引だったかもしれない。 家に居たい、という彼女の意見を一切聞かずにここまで引っ張り出した。 そのため電車の中でもバスの中でも、一貫してこの表情である。 しかし貰ったチケットは2枚。他に誘う相手もいないし、部屋に引き篭もっていては気が滅入るだろうし。 ――というのは建前で。 本当の所、凛とこうして遊びたかっただけだったりする。 【凛】 「……拗ねてなんかない……」 【圭介】 「わかったわかった。とりあえずほらチケットな。失くすなよ?」 不満顔の凛にチケットを渡す。 渋々ながら受け取った凛はチケットを訝しげな表情で睨み付ける。 【圭介】 「ってか、お前プールって知ってるか?」 【凛】 「知識、という意味では知ってる。泳ぐ所でしょ?」 【圭介】 「まあ、それだけじゃないんだが、とりあえず正解だ」 【凛】 「馬鹿にしてる……」 ますます不満顔だ。小柄な凛がオレを責めるような上目遣いで睨む。 しかし全くもって凄みが無い。むしろ可愛らしくて仕方が無い。 【圭介】 「ご、ごほんっ! よし、それじゃ行くかー!」 恥ずかしさのせいか、顔が熱い。 オレは凛に悟られまいと、わざとらしく咳払いをしてさっさと入場口に向かって歩き出した。 ■立ち絵:なし 【凛】 「自分勝手なんだから……」 わざとオレに聞こえるように呟いた凛の独り言はこの際無視する。 自分勝手でもワガママでもオレは凛とデートをしたいんだ。 ■シーン:場面変更 ■背景:プールサイド 男の着替えは早い。 通例に習い、オレは凛が着替え終わるのをプールサイドで待っていた。 『人工的に波を発生させるプール。施設の中をぐるりと一周出来る流れるプール。 大型スライダーに子供用プールに50mプール。温泉ジャグジーにサウナまで付いた一大レジャー施設! フードコートも充実! 一日では遊び尽くせない程のアトラクションをお楽しみ下さい』 更衣室に置かれていたパンフレットに目を落とすとそんな文言が書かれている。 この施設は確かに広い。すべてのプールを回ったらヘトヘトになってしまうだろう。 しかし、その分楽しみが倍増したのは言うまでも無い事だ。 【圭介】 「そういえば、アイツ水着なんて持ってるのか?」 制服以外では寝間着代わりにオレが渡したTシャツと今日も着ていたお気に入りの服装しか見た事が無いのだが果たして水着なんてものを持っているのだろうか。 アイツの事だ、私服のまま入ってきてしまうとか、下着姿で登場する可能性だって有り得る。 【圭介】 「大丈夫かな……」 なんだか心配になってきた。 【凛】 「圭介……」 ちゃんと確認すれば良かった。 いや、それより水着を一緒に買いに……ダメだ。なんかそれは恥ずかしいからダメだ。 【凛】 「圭介……?」 下着姿ならまだしも、素っ裸で現れたりなんかしたら、色々な意味でアウトだ。法的にも男性視線的にも! 【凛】 「圭介っ……!」 【圭介】 「うわっ!?」 か細くも力強いオレを呼ぶ声が聞こえた。 驚いて我に返ったオレの目の前には、いつの間にか凛が立っていたのだ。 ■立ち絵:凛/悲しい ※水着:フリルの付いた白のビキニ 【凛】 「……私と居るのが嫌なら帰る」 どうも無視した形になっていたようだ。 俯いた凛は悲しげに呟き、白く透き通る腕を胸に抱き寄せていた。 【圭介】 「悪いっ! そんなつもり、じゃ――!」 【凛】 「?」 気づかなかった。 凛はその美しいスタイルを強調するかのような扇情的な水着を纏っていたのだ。 小振りだが綺麗な形のバスト、くびれた腰、丸みを帯びたお尻とすらりと伸びた白い足。 どれを取っても稀代の彫刻家の作品のような、美しさを覗かせていた。 【凛】 「変、なの? これ」 【圭介】 「変なわけあるかっ!」 【凛】 「!」 ■立ち絵:凛/驚き 思わず大声を出してしまった。 びくっと身じろぐ凛。 【圭介】 「ご、ごめん。あー、あれだ。そのー」 ――見惚れていました、なんてとてもじゃないけど言えない。 ■立ち絵:凛/照れ 【凛】 「変、じゃない?」 あー、恥ずかしくて言えません。 最高に似合っていて、綺麗で、可愛くて、今すぐ抱きしめたい、なんて口が裂けても言えません! 【圭介】 「良い、と……思います」 我ながら情けない程根性の無いオレの口から出せるのはコレが精一杯だった。 しかし凛は―― ■立ち絵:凛/笑顔 【凛】 「良かった……」 悲しくなる程安堵した表情を浮かべたのだった。 ああ、情けない。気の利いた言葉の一つも掛けられないとは、何のためにデートに誘ったのかわからないじゃないか。 【凛】 「泳がないの?」 自己嫌悪に陥るオレの腕を静かに掴むと、凛はオレの顔を覗き込んだ。 【圭介】 「! お、泳ぐに決まってるだろ?」 上擦った声がプールサイドに響く。 【凛】 「行こっ」 【圭介】 「お、おう!」 心なしか機嫌が良くなった凛はいつになく積極的である。 オレの腕に抱きつき引っ張ると、流れるプールへと歩き出した。 ■シーン:場面切り替え プールに入って泳ぐ ■画像表示:浮き輪に乗って浮かぶ凛。笑顔 【凛】 「〜〜♪ ふふっ……」 なぜ彼女がプールに行きたがらなかったのか。それが判明したのついさっきの事だ。 流れるプールに意気揚々と入って行ったもののオレの体に抱きついたまま離れようとしないので、不思議に思ったオレは凛の腕を解き、ぽいっとプールに投げ込んでみた。 ■SE:水の音(バシャバシャ) ■画像表示:溺れる凛(デフォルメ) 慌てて助け出したが噛み付かれる程怒られた。 まあつまり凛はカナヅチだったようで、それを知られるのが嫌だったようだ。 ■画像表示:浮き輪に乗って浮かぶ凛 笑顔 今はレンタルの浮き輪の上に乗って上機嫌である。 水に入る事自体に抵抗は無いみたいだから、練習すれば泳げるようにはなるのだろう。 【圭介】 「凛、楽しいか?」 【凛】 「うんっ……!」 良かった。 ずっと不機嫌だったらどうしようと内心冷や冷やしていたが、機嫌を良くした彼女を見てるとこっちまで嬉しくなって来た。 【圭介】 「な? 家に引き篭もってるより、こういう風に遊んだ方が楽しいだろ?」 【凛】 「ひ、引き篭もりじゃないもん……ばかっ」 ■画像表示:浮き輪に乗って浮かぶ凛 照れながら拗ねる ■SE:水の音(バシャッ!) パシャ! 凛は顔を赤くしつつ、オレに向かって水を掛けた。 【圭介】 「このっ! お前なんかこうだっ!」 泳げないという弱点を知っているオレに水の中で勝てると思うなよ。 オレは浮き輪を両手で持つとぐるり、と縦に回転させた。 【凛】 「きゃあっ!」 ■背景:黒背景 ■SE:水の音(バシャーン!) ひっくり返った凛の可愛らしいお尻がプカプカ浮いて、やがて水の中に沈んで行くと……最後には大きな水飛沫を上げながら浮かび上がってきた。 【圭介】 「あはははっ!」 【凛】 「ぷはっ! ばかっ……はやくっ……助けてっ!」 【圭介】 「はいはい」 オレは凛の小さくて華奢な体を優しく持ち上げた。 【凛】 「はぁっ、はぁっ! 何てことするのよっ! し、死んじゃうでしょっ!」 半泣きである。 プールの水が目に入ったからか、それとも涙からなのか、凛は目を真っ赤にして怒った。 暗殺者だって言うのにプールで溺れて死んだら恥ずかしくて成仏できそうにないだろう。 【圭介】 「ごめんって! 助けてやったんだからいいだろ?」 プールに入る前とはどこか違う。 凛が綺麗で可愛くて、何より愛おしいと素直に感じて、ごく自然に彼女の体を引き寄せた。 ■画像表示:プールの中で抱き合う二人。凛は怒った顔 【凛】 「次やったら……殺すからね」 囁くような脅迫がオレの耳をくすぐる。 【圭介】 「へへーん、でもお前の毒なんて効かないもんね」 【凛】 「包丁だろうが拳銃だろうがダイナマイトだろうが、どんな手を使ってでも殺す」 【圭介】 「そりゃ怖い。……どうしたら許してくれるんだ?」 オレはそんな暗殺者の体をより力を込めて抱き締める。 このまま更に力を入れたら折れてしまいそうな、小さくて華奢な体。 【凛】 「……自分で……考えて……」 消え入りそうな声で凛はそう行ってオレの胸に顔を埋めた。 プールの水で塗れた髪はシャンプーの匂いと彼女自身の甘い香りが漂う。 ■画像表示:プールの中で抱き合う二人 ※凛が照れて俯く 【圭介】 「オレ馬鹿だからわかんねーなぁ」 できるだけ意地悪く言ってみる。オレの顔は緩みきっていたのだろう。 凛はオレの顔を見るや否や 【凛】 「いじわる」 ■画像表示:プールの中で抱き合う二人 ※口付けをする いじけた表情を浮かべたまま、そう呟いて唇を押し付けた。 プール独特の塩素の匂いと味が鼻に付く。 啄ばむような軽いキスをすると、凛はすぐに顔を離した。その顔は耳まで朱に染まり頬は蒸気している。 ■画像表示:プールの中で抱き合う二人 ※凛が照れて俯く 【圭介】 「今ので……許してくれたのか?」 【凛】 「……まだ、許さな――!」 ■画像表示:プールの中で抱き合う二人 ※口付けをする そんな凛の言葉をオレは唇で塞いだ。 不意打ち気味に放ったせいで凛は驚いた表情を浮かべたが、やがて安堵したようにまぶたを閉じる。 ■演出:フェードアウト オレ達は抱き合いながら何度かキスを交わした。 だが、我に返ってみればここはお客さんがたくさんいる人気のプール施設だ。 当然注目を浴びていたオレ達は慌てて体を引き離し――主に凛が――そそくさとプールサイドへと逃げ出した。 ■演出:フェードイン ■背景:プールサイド ■立ち絵:凛/照れ 【凛】 「……うぅ……恥ずかしい」 オレもだ。まさかこんな大衆の面前であんな大胆な行為に出るとは思いも寄らなかった。お互いに。 【圭介】 「ま、まあ、コレも良い思い出っつうことで!」 誤魔化すように大きな笑いを上げてみる。 【凛】 「ばか、変態、エッチ、犯罪者」 犯罪者はお前だろう、と心の中でツッコミを入れる。 再び拗ね始めた凛の機嫌を直すには時間がかかるだろう。大分楽しんだし、お昼ご飯は外で食べて、どこか違う場所へ移動するのもアリなのかもしれない。 【圭介】 「凛」 【凛】 「ふえ?」 ■立ち絵:凛/驚き 【圭介】 「楽しかったか……?」 ■立ち絵:凛/笑顔 【凛】 「……うん!」 あぁ。それなら良かった。 この世界一可愛い笑顔を見るためだったらオレはどんな事でもするだろう。 例え他の暗殺者が来ても凛だけは、この笑顔だけは守ってみせる。 オレは静かに心の中で決意すると 【圭介】 「よし、じゃあ昼飯だ」 凛に向かって手を差し伸べた。 【凛】 「うんっ」 彼女の白くて綺麗な手を握り、オレは歩き出した。 一日はもう半分ある。 家に帰ったら爆睡出来るくらい遊び回ろう。 夢の中でも見れるくらい、凛の笑顔をたくさん見よう。 ■演出:フェードアウト 3日後の事になるが、新聞の一面を飾り各放送局のトップニュースとなった事件はこのプールから発生していた。 その名も「原因不明! 集団感染食中毒事件!」である。 凛がなぜ泳げなかったのか。それはきっと、自分の毒が周りの人に影響を与えないように、という暗殺者なりの優しさだったのかもしれない。 //終了